日経MJ (2007年5月2日) 「にぎわう専門通販」
(下部に全文掲載しています)
にぎわう専門通販
オフィスハートアート(東京都調布市)
人工宝石、女性の心つかむ
ネックレスなど宝飾品のネット販売を手掛けるオフィスハートアート(東京都調布市、天貝浩子代表)。宝飾品を扱う通販サイトが多い中で、低価格ながら本物に近い「人工宝石」の商品をそろえることで特色を出している。「本物志向」と「安さ」が受けて利用者を着実に増やし、売り上げを伸ばしている。
同社が通販サイト「ジュエリーハートアート」を開設したのは昨年四月。ネックレスやリング、ピアス、ブレスレットなど約200点を取り扱う。商品の仕入れ先は大手のアクセサリーメーカーなど6、7社で、天貝代表が厳選して仕入れているほか、提案してつくってもらったオリジナル商品をそろえる。一部には男性向け商品も扱うが、主要なターゲットは30代以上の女性だ。
サイトで前面に打ち出しているコンセプトが「トラベルジュエリー」だ。欧米のセレブ女性たちは旅先に高価な宝石ではなく、精巧にできた代用品を持って行く。その代用品がトラベルジュエリーだ。高品質で高額に見える商品を低価格で幅広い人に提供する―。これが天貝代表のビジネスの基本だ。
実際にサイトに並ぶ商品の価格は全般に低めだ。安い商品で四千円台、高い商品で四万円台だが、ほとんどが一万円以内だ。人工石を使い、土台の金属部分は一般的なスターリングシルバーを用い、プラチナなどで仕上げるなどして価格を抑えているからだ。
商品の目利きやマーケティングでは天貝代表の過去の経験が生かされている。高級ブランドのシャネルの日本法人に約5年間在籍した後、1991年から1年間、宝飾品業界でよく知られる教育・鑑定機関の米GIAに留学。そこでグラジュエート・ジェモロジスト(GG)と呼ばれる国際的な宝石の鑑定士の資格を取得した。帰国後、スイスの宝飾品メーカーなどを経て独立した。
ネット通販で本物の宝石を取り扱うには仕入れやセキュリティー対策などで多額の資金が必要になる。トラベルジュエリーを商品のコンセプトの中核に据えたのは十分な資金がなかったという事情もある。
ただ半面、「人工宝石も見た目は本物とほとんど変わらない。作りがきっちりしていれば、購入してもらえるはず」(天貝代表)との目算もあった。このため、商品を選定する際には高級感の有無はもちろん、金属部分などを含めた商品の作り込みがしっかりしているかなど、見栄えには徹底してこだわるという。
利用者の関心を呼び込むため、サイトはほぼ毎日更新している。宝石に関連した天貝代表自身の体験談や宝石の基礎知識など様々な情報を掲載している。また贈答用であればリボンを付けて発送するなど、細かな気配りも欠かさない。
「トラベルジュエリー」という言葉がメディアでも取りあげられる追い風などもあって利用者は着実に増加。平均単価は一万二千円程度で、購入者数は累計で一千人を超えているという。
今後のサイト運営について天貝代表は「同じデザインでも金属の部分だけを変えた商品など、利用者の様々な要望にこたえられるように商品数を増やしたい」と意気込む。さらに将来は既存事業以外に通販サイトの運営業者を対象に宝飾品の卸事業へ乗り出すことなども視野に入れている。(仮屋俊一)