Vol. 24 フォルチュナート・ピオ・カステラーニ(1793-1865)
古代ジュエリーの技術「粒金細工」を復刻させたジュエラー
1815年には、フォルチュナート・カステラーニはローマでフランスやイギリス様式のジュエリーを制作している宝飾店経営者でしたが、1820年代後半までに、古典的なジュエリー(特にエルトリア様式)に対する彼の情熱はジュエリーのファッショントレンドを創り出すまでになっていきます。
彼のキャリアで転機となったのは1828年にローマ近郊の墓から出土したエルトリアの金装飾品を鑑定する機会に恵まれたことでした。粒金細工(グラニュレーション)という神秘的なエトルリアの技術はカステラーニの心を捉えたのです。何千もの小さな金の粒が滑らかな金の表面に繊細に並べられていることに魅了されたと同時に困惑しました。それからというもの、カステラーニは粒金細工の秘密を発見し、この美しい技術を使って自社のジュエリーを制作しようと決めたのでした。
ある日、エルトリア人の製法に似た方法を使っている小さな村で農民のグループを見つけ、すぐにその農民たちを彼の店に雇うことにしました。この農民たちがカステラーニに教えたのが粒金細工の方法そのものであったのかは定かではありませんが、何か似通った方法をもたらしたに違いありません。
カステラーニが復活させたジュエリーは金とフィリグリーで作られ、その後、すぐに古代のジュエリーのデザインと技術を真似て、寸分違わないレプリカを制作しました。出来上がったものは全く新しくもなく、クリエイティブでもありませんが、金細工そのものに対する姿勢が革新的だったのです。カステラーニのジュエリーは純粋で、贅沢で、洗練され、独自性のあるものでした。
カステラーニは粒金細工の謎に近づきはしたものの、解決したわけではありませんでした。それでも、カステラーニの復刻ジュエリーが数十年にも渡ってヨーロッパ、イギリス、アメリカに衝撃を与えたことは事実です。彼の影響力は今でもイタリアのジュエリーに及んでいるといっても過言ではないでしょう。